プロードライザを交換しても再起動が掛かる dynabook で AC 使用時の電源の汚さを目で見たい(その2)
先日来、dynabook TX/65、66 のプロードライザ交換を行って来たものの、(コンピュータの電源が完全に切れている状態から起動する) コールドスタートでリセットが掛かる問題を2台の dynabook で発症し、此れの対処に追われている。
今回は自分が勤める会社で、設計部時代に苦楽を共にした同僚と検証してみたいと思う。 5年間ほど、自分がソフト設計、彼が電気設計を行って来たコンビだ。 |
先ずは、前回再起動が掛かる dynabook で AC 使用時の電源の汚さを目で見たいで大きな間違いを指摘された。
オシロスコープが X10 のプローブを使っていたので、計測した電圧を 10X とする必要があった。なので、前回の記事は追記訂正を行ったが、報告した電圧は全て 1/10 だった訳だ。
前回、テスト端子の様な基板上のランドを見ていた訳だけど、このランドは、AD3208 の SW1 と SW2 の端子を見ていたことが判明した。
スイッチング・パルスを見ることが正解だったとするなら、間違ってはいなかった。
PC が、平常負荷時ここの電圧は、バッテリー駆動時 13.3V、AC アダプター駆動時 19.9V のピーク電圧があった。
AC 駆動時の方が電圧が高い分、パルス幅が狭くなっている。
root mean square value, RMS 実効値はダイアログに示す通り、バッテリー駆動で 3.5V、AC アダプター駆動時 4.3V となっていた。
↑ の方のブログを参考に、AD3208 の CSREF と CSSUM 間にコンデンサを入れてみたい。
負荷変動に伴う電圧変動のピーキーなスイッチング・パルスを AD3208 のリファレンスとなる電圧にコンデンサを入れて少し鈍らせることで、スイッチングパルスを平滑化しようという試みである。 本来は、プロードライザが平滑を行う訳だが、交換したプロードライザがリード線に半田付けしたものである為か?本来の性能を発揮出来ないらしい。 リフローに依る取り付けなら安定するのかも知れない。 |
確かに、コンデンサを入れることで、SW1 のパルス幅と間隔が安定することが判った。
但し、103 = 0.01μF では TX/66 の場合起動することが出来なかったので、最適なコンデンサの容量を探る必要があった。 手持ちのコンデンサから幾つか選んで実験してみた。 |
容量 | TX/66 の挙動 |
コンデンサ無 | コールドスタートでリセットが掛かる |
103 (0.01μF) | ピーと発信して起動せず |
102 (1000pF) | 通電するも起動せず |
221 (220pF) | OK |
221X2並列(441相当) | コールドスタートでリセットが掛かる |
221X2直接(111相当) | OK |
上記の実験結果から、CSREF と CSSUM 間に 220pF のセラミックコンデンサを配置することにした。 |
流石は、電気屋さん!コンデンサを取り付ける為のリード線を綺麗に半田付けしてくれた!
AD3208 への半田付けは 0.3mm のシャーペン芯に半田付けする様なもので、視力も必要だけど、手先が器用でないと簡単に隣のピンをブリッジしてしまう。
という訳で、プロードライザを交換してもなお、コールドスタートからの起動で PC にリセットが掛かってしまう dynabook TX66 の問題は、Buck Controller ADP3208 へセラミックコンデンサを追加することで、回避出来た(と思う)
(追記) AC アダプター駆動だと何故 dynabook が落ちるのか…を考察します。
そもそも、Buck Controller が、パルス幅を可変としている背景には、CPU 負荷に応じてクロックに伴う電力を制御したり、省電力制御する必要がある為で、HDD へのアクセスに依る PC 全体の電力増減というよりも、CPU 負荷そのものが、影響していると思われる。
依って、CPU の省電力制御をソフト的にキャンセルすれば、パルス幅を一定に保つことが出来て、リセットの憂き目に遭わないかも知れない。かと言ってパフォーマンス優先として CPU クロックを常時最大に設定すると、リセットが頻繁に訪れるかもしれないが…
”パルス幅が 500ns 以上続く事態が頻繁に起こると” という実験結果だったが、実効値は積分面積となるので、むしろその後に訪れるパルス幅が狭くなる部分を巧く平滑出来ず電力不足が生じてリセットに至るのではないかと私は推測します。
バッテリー駆動に於いても CPU 負荷に伴うパルス幅の変化はあるので、AC アダプターが作った電源が汚いということではなくて (AC アダプターの 19V を見てもノイズ等が載っている情況は確認出来ませんでした)、AC 駆動時にスイッチング電圧が高くなった分、パルス幅が狭くなる(周波数が上がる)ことと、プロードライザの容量抜けが高い周波数のパルスを平滑出来なくなるのが、原因と考えます。
こう考えると不具合が起こるメカニズムに納得が行きます。
逆に AC アダプターを使用した際に、電源が汚いとかノイズが載るとするなら、その客観的な証拠を見せて欲しいと思います。
これまでも、プロードライザの交換で問題を解決出来たと思っていた時期もあるので、慎重に経過を観察したいと思う。
蛇足ではありますが、 工作に当たっては、以下の様な半田コテが必要です。
ADP3208 は、スケールを見て判る様に、ピン間ピッチが短いです。 |
コテ先が細い半田コテと 0.3mm の糸半田 自分は上記の 15W 半田コテを使いました。 写真奥は一般的な 1.0mm の糸半田ですが、この太さでは絶対に巧く半田付けを出来ません。 |
追記:
- 画面表示しない dynabook を久々に弄る 2014年6月
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コメント
おつかれさまです。
詳細レポート拝見しました。
内容ばっちり理解されており、うまくまとめてあります。
1箇所だけ
221X2並列(442相当) タイプミス!
これで、ダイナブックおたくの人がパルス幅とブロードライザの相性を調べてくれるでしょう!!
おみやげもありがとうございます!!!
投稿: naga | 2013年6月 7日 (金) 21時25分
naga さん、お疲れ様でした。
”おみやげ” で問題が再発した際は是非ご連絡下さい。
今後とも宜しくお願い致します m(_ _)m
投稿: ひで | 2013年6月 7日 (金) 21時29分
おつかれさまでした。
まだ格闘していたのですね。修理に関してはほぼ正解だと思います。
気になった事はブロードライザを変えてもリセットが起きる点です。もしかすると他の部分に原因があるかもしれませんね。
電源のノイズは一般のオシロスコープやノイズメーターで調べることは、非常に難しく簡易オシロではまず無理ですね。
ちゃんと調べたいと思うのでしたら専用の物が必要になります。約40万ほどで買えますよ。
それとウィン○○ではなく、リサイクル業者の方です。
それ以前は某メーカーの修理センターに20年ほど居りました。
これからもどんどん修理にチャレンジがんばってください。
投稿: ねこっこ | 2013年6月12日 (水) 02時42分
ねこっこ さん、コメントありがとうございます。
ウィン○○ さんではなかったんですね。目黒の業者様ですか?
会社の研究室に持ち込めば、どんな設備でもあるので、ノイズがあるなら
見てみたいと思うのですが、具体的には何処を見れば良いでしょうか?
>ブロードライザを変えてもリセットが起きる点
これは、私も理解に苦しむ処ですが、部品を供給して下さった方の意見では
面接触しない実装方法に問題があると言われました。
投稿: ひで | 2013年6月12日 (水) 22時14分
こんばんは
ウィン○○も回収業者ですが、そこからさらに回収している会社です。東村山繋がりでジャンク○ー○○といえばわかるかな?
そこの本社R○○にいました。
設備が揃っているとの事、大変うらやましいです。PC内のノイズを見る前にアダプターとバッテリーを見るといいですよ。
そのままでは見れない(機種によっては見れます)ので、間にいくつか機器を噛ませる事になると思います。
自分でやる分には簡単なのですが、説明となるとどう言ったらいいのか難しいです。
簡単に言うと高周波を見るとしか言いようが無いです。
投稿: ねこっこ | 2013年6月13日 (木) 04時57分
ジャンク○ー○○ですか~行ったことないんで、近々行ってみよう!
でも、ウィン○○から仕入れたりしてるんじゃ、値段高そうだな。
漏れもウィン○○から個人的に仕入れたい(笑)
投稿: ひで | 2013年6月13日 (木) 21時31分
TX65で同様の経験しました。私の場合はOE907を始めに1つ取り付けて、1日位作動させて順調に動いていたので、ウィンドウズ8にバージョンUPしたのですが、入れていると途中から、フリーズを繰り返したり再起動掛かっては電源落ちたりの繰り返しで、散々酷い目にあいクリーンインストール出来ずに途中で断念しました。そこでOE907を並列で追加取り付けしたところ、今まで10日余りしかたっていませんが、全て順調に動いています。参考になるか判りませんが、書いてみました。
投稿: エレッセの父 | 2013年11月15日 (金) 11時05分
エレッセの父 さん、コメントありがとうございます
プロードライザの2段重ねで巧くいった報告は web でも幾つか
見かけます。
問題が再発しないとイイですね。
投稿: ひで | 2013年11月16日 (土) 10時18分
プロードライザー自体が歩留りが悪く、新しいものに交換しても駄目なことが多いですね。
どうも信用できないのでプロードライザーは使用せず、3216サイズのチップコン×12個を並列にセットしたらOKになりました。
(TX66C, TX65D, AX53C, AX53D, AX57E...等)
それより問題なのは熱で壊れたプロードライザーより、同原因でハンダ割れしたGPUによる画面の乱れです。
リフローしても再発する事が多く、ホットガン程度ではGPUを剥がすこともできないので。。。
どなたか良い方法がありましたらご指導下さい。m(_ _)m
投稿: ナヤンデルタール人 | 2015年11月27日 (金) 20時40分
ナヤンデルタール人 さん、コメントありがとうございます
お返事がすっかり遅くなりました m(_ _)m
プロードライザーの歩留りの問題ではなくて半田の接触状態に依る
インピーダンスが問題の様です。
半田が劣化するとインピーダンスが上がる…
プロが行なうグラフィックチップの修理はりボールするそうですけど、
コストを考えるとマザーボード交換と差が無い様に思えます。
アマチュアでは、リフローする位しか方法はないのではないでしょうか?
投稿: ひで | 2015年11月29日 (日) 22時54分
大変参考になる記事をありがとうございます!
それと、古い記事にコメントごめんなさい。
ちょっと気になったのですが、こちらのページの画像p6070010w400.jpgですが、水色の線がCSREFとCSSUMではなく、CSREFとHAMPに繋がっているように見えますがいかがでしょうか。
投稿: まもくん | 2018年5月 8日 (火) 23時18分
まもくん さん、こんにちは
水色のリード線ですが、隣接した IC のピンに触るのが難しくて CSSUM が
繋がっている先のランドに繋げたと記憶してます。
投稿: ひで | 2018年5月 9日 (水) 00時13分
確かにCSREFと隣り合わせてるので、半田がし難いのは私も同じ感想です。
ですが、CSSUMにはランドは無く、直近にあるランドはHAMPのランドなんです。。
はてなはてな。。
ってことでルーペで拡大して追ってみると、CSSUMの足ではなく、直近のコンデンサに繋ぐ方法が一番安全のようです。
私はバカが付くほどの素人なので、ひでさまにご意見するのは大変恐縮なんですが。。。
とりあえず、CSREFと上記コンデンサに150pfを繋いだら、通電はするもののBIOSも起動しない状態でしたので、涙ながらにご連絡させて頂きました次第です。
ですがそのあと、27pfのコンデンサを繋いだら、なんと安定して動くようになったのです!!
まだ連続運用のテスト中ですが。。
まだまだ安心は出来ませんが、とりあえず感謝しています!!
投稿: まもくん | 2018年5月 9日 (水) 01時07分